奴らは車の中に居る俺たちに覆い被さり、いきなり襲いかかってきやがった。なんてこったい、前後左右取り囲まれて逃げ場がない。

2本とも3本ともしれない足の上に大きな図体が乗って、行ったり来たりして獲物を探している。

これは悪夢なのか、とうとう宇宙人による侵略が始まったのか。

俺たちが逃げられないと感づくや、ぐるぐる回転する2つのアームが出てきた。

そして、少しねっとりした液をバシャバシャと、あらゆる方向からぶっかけてくる。おかげで視界が遮られ、突破しようにも身動きがとれない。知性も相当ある生物のようだ。

アーム攻撃が終わったとほっとしたのも束の間、今度は2本のフレキシブルなダクトを持った器官の口をじわじわと這わせて、熱風を浴びせる攻撃に転じてきた。まるで掃除機の化け物だ。

辛うじて車のバリアーのおかげで、中に居る我々は丸焼けにならずに済んだ。

そして、前方の視界が開けて奴の足が一瞬上に上がった隙をついて、猛ダッシュで恐るべき宇宙生物から逃れる事が出来たのだ。


安全圏と思われる場所にやっとたどり着いた後になって、あの宇宙生物の方向から逃げ出しぎわに聞こえてきた言葉を思い出した。「ご利用ありがとうございました」