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4月24日 映画「乱」 [2022年 日記]

これまで何本か黒沢監督の映画を見て来たが、これもまた黒沢監督らしさ全開の映画だった。

ただ、ずっと仲代達矢の芝居を見ているような感覚に陥る事もあった。製作に携わられた方々には失礼な言い方かもしれないが、雄大な自然や城下で繰り広げられるおとぎ話のような贅沢な舞台。そういった意味では少し前のハリウッド映画の特異な主人公のようでもあり、映画という世界の魅力の一面とも言える。

ピーターの演じる道化の役回りもどこか共感にまで至りにくかったのは自分の感受性の少なさのせいだろう。なぜそこで素っ頓狂に踊り出すのか、なぜその場面で声をあげて悲しむのか。

荒野に煙が流れる幻想的なシーンや、わざわざ風の強い日を選んで撮ったであろうシーンは確かに印象に残るし見ていて満足感が大きい。視聴後にも思い出すのはそんなシーンの数々だ。

見たことのあるような大草原の風景は、やはり阿蘇やくじゅうでのロケのようで、撮影協力にクレジットされていた。山並のスカイラインの形から、知った山が出ると興ざめするなと余計な心配をしていたがそこは大丈夫だった。山名を同定できる山には幸い気づかずに済んだ。もちろんカットカットのアングルに気配りがされているのかもしれない。

憎しみあい苦しんで生きるのが人間だ、哀しい性。それをわかったうえで、悲しんで暗い気持ちになるのか、それともそうだと受け入れて生きていくのか。大きな違いだ。たとえ受け入れていくにせよ、人への見方が希望や明るさに満ちたものでなくなり疑いや冷たいものになるのなら、これもまた哀しい事だ。

否、最後のシーン、仏の掛け軸を見せることで、そういった自覚をしているということ自体で救いになっていると受けとめたい。

タグ:映画
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